カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを初めて知り、購入や契約に至るまでの一連のプロセスを指します。近年では、購入後のリピート利用やレビュー投稿なども含めた、より広範な顧客体験全体を捉えることが一般的です。そして、この顧客体験を視覚的に表現したものがカスタマージャーニーマップであり、顧客中心のマーケティング戦略を策定する上で欠かせないツールとなっています。
インターネットとスマートフォンの普及により、顧客の購買プロセスは複雑化の一途を辿っています。企業が最適なタイミングで適切な情報を提供するため、多くの企業がカスタマージャーニーマップを活用しています。まだ導入していない企業や、既存のマップが時代遅れになっている企業は、顧客視点に立ったマーケティング施策を展開するために、カスタマージャーニーマップの作成や見直しを検討する価値があるでしょう。
カスタマージャーニーを設計する最大のメリットは、その過程で、組織全体で顧客に対する共通認識が生まれることです。近年、顧客視点でのマーケティング戦略立案が重要視されていますが、部門間の顧客理解のズレを減らすことで、一貫性のある施策の実行が可能になります。
BtoC企業だけでなく、BtoB企業にとっても、カスタマージャーニーマップは非常に有効なツールです。BtoBでは、購買行動が比較的定型化されているため、カスタマージャーニーを詳細に把握することで、営業・マーケティング戦略の精度を大幅に向上させることができます。
BtoBの購買プロセスには、複数の意思決定者が関与し、期間も長期に及ぶことが多いため、各段階で関係する担当者の立場や心理状態を深く理解することが不可欠です。カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動パターンや感情の変化を可視化し、顧客体験を向上させるための効果的な施策を実行できます。さらに、顧客との良好な関係を構築し、製品やサービスの導入をスムーズに進めるための道筋を描きやすくなります。
戦略や計画を見直すことで、パフォーマンスを改善できます。カスタマージャーニーは、計画段階のガイドラインとして活用できるだけでなく、実行中の戦略をスムーズに修正するための道しるべとしても役立ちます。これは、カスタマージャーニーに基づいて、当初の計画と実際の運用状況とのギャップを分析することで、マーケティング戦略における課題や改善点を見つけやすくなるためです。
例えば、リード獲得につながらないタッチポイントや、離脱率の高いチャネルを特定できれば、成果が出ない理由を仮説立てることができます。その仮説に基づいて解決策を考案し実行することで、マーケティング活動全体のパフォーマンス向上につながります。
BtoBとBtoCでは、顧客の意思決定プロセスが大きく異なるため、カスタマージャーニーマップの設計にも違いが生じます。BtoB企業がカスタマージャーニーマップを作成する際には、以下の点に特に注意する必要があります。
BtoBの場合、まずは窓口となる企業の担当者をペルソナとして設定することから始めましょう。最終的な意思決定者は別にいる可能性もありますが、担当者の興味や関心を引かなければ、次の段階に進むことはできません。担当者の心を掴むことができれば、商品やサービスを上司に推薦してくれる可能性が高まります。
ジャーニーマップを活用することで、各フェーズでの顧客接点の価値や課題発見に役立つ情報を提供し、マーケティング施策の策定やユーザー心理の深掘りに寄与します。
BtoB企業がカスタマージャーニーマップを作成することで、以下のメリットが期待できます。
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客視点に基づいた一貫性のある活動が可能になり、結果として受注率を高めるために最も効果的な施策に、部門間で協力して取り組めるようになります。
BtoBビジネスにおけるカスタマージャーニーマップ作成では、関係者を一同に集めてワークショップ形式で進めるのが効果的です。ここでは、BtoBビジネスにおけるカスタマージャーニーマップの作成手順を、8つのステップに分けて詳しく解説します。
最初に、マップ作成の目的と、対象とするカスタマージャーニーの範囲を明確にします。カスタマージャーニーマップは、顧客視点からサービスの体験全体を理解するためのツールであり、受注率アップだけでなく、解約率の低下や新たな市場への進出など、多岐にわたる目的に活用できます。現在抱えている課題のうち、どのテーマの解決に役立てたいのかを明確にし、対象となる顧客体験の「開始点」と「終了点」を決定しましょう。
テーマが明確になったら、ターゲットとなる企業と、その担当者のペルソナを具体的に設定します。ペルソナを検討する際には、既存の優良顧客を想定するケースと、これから開拓を目指す新規顧客を想定するケースの大きく2つに分けられます。既存顧客のペルソナを作る場合は、営業担当者やカスタマーサクセス担当者へのヒアリング、または社内のCRMに蓄積された過去の受注データを分析する方法が有効です。一方、新規顧客層のペルソナを作成する場合は、ターゲットとなる顧客に対してインタビュー調査やアンケート調査を実施し、情報を収集することになります。いずれの場合も、対象者の定性的な情報と定量的な情報の両方を集め、顧客間の共通点を言葉で表現していくことが重要です。BtoBにおいては、ターゲットとなる企業と担当者の両方について、それぞれペルソナを作成する必要がある点に注意しましょう。
重要なのは、担当者の職務内容や抱える問題点に焦点を当て、読み手によって解釈が異なることのないよう、抽象的な表現は避け、具体的な記述を心がけることです。また、カスタマージャーニーマップを作成した後、改めてペルソナを見直し、その妥当性を検証することをお勧めします。
作成したペルソナが、カスタマージャーニーの開始から終了までに行う行動を、できる限り詳細に洗い出します。例えば、自社の課題に関連するキーワードをインターネットで検索し、見つけたホワイトペーパーをダウンロードする、そこで紹介されていたサービスについてWebサイトから問い合わせを行うなど、顧客の多くが取るであろう行動をリストアップします。この際、営業部門のみで作成すると、検討段階以降の行動に偏ったり、マーケティング部門のみでは、サービス認知段階に重点が置かれるなど、全体のバランスが崩れることがあります。マップのテーマに合わせて、多角的な視点を取り入れることが重要です。
洗い出した行動を、大きなまとまりごとにグループ化し、それぞれのグループをステージとして定義します。例えば、Web検索、サービスサイトの閲覧、資料ダウンロードなどを「情報収集ステージ」、見積もり依頼、予算調整、社内承認などを「社内調整ステージ」のように分類します。BtoBの場合、商材や業種によって多少の違いはありますが、上記のようなステージ構成は類似していることが多いです。他社の事例を参考にしつつ、自社特有の行動を反映したステージを設定するとよいでしょう。
次に、各ステージにおける顧客の感情の変化を推測し、記録します。BtoBにおいては、一般的に顧客の感情は、「売上が伸び悩んでいる」「人員不足である」といったビジネス上の課題に対するネガティブな感情から始まり、商品やサービスによって課題が解決され、満足感を得るという流れになります。その過程で、解決への期待が高まったり、社内の反対により導入意欲が低下するなど、各ステージで起こりうる感情の変化を洗い出します。マップ内に水平線を引き、ポジティブな感情を上側、ネガティブな感情を下側、中立的な感情を中央に配置するなど、感情を整理しながら進めると効果的です。また、感情を視覚的に分かりやすくするために、色分けや笑顔、泣き顔などのアイコンを使用することも有効です。この際、顧客の課題に焦点を当てすぎると、どうしてもネガティブな感情が中心になりがちですが、「課題が解決できそうだ」という期待感や、「思ったよりも価格が手頃で嬉しい」など、ポジティブな感情も意識して書き出すことで、顧客が求める体験をより明確に把握できます。商談記録や販促イベントでのアンケート結果なども参考にしながら、ペルソナに合致する人物像を具体的にイメージし、想像力を働かせましょう。
顧客の感情をある程度把握したら、次に顧客が接触する可能性のあるメディアやチャネルなどのタッチポイントを洗い出します。BtoBにおいては、BtoCと比べて顧客とのタッチポイントは一定のパターンを持つ傾向があります。例えば、広告やウェブサイトを通じた担当者個人とのオンラインでの接点から始まり、検討が進むにつれて営業担当者との商談や提案、見積もりなど、社内関係者を巻き込んだ対面での接点が中心になります。他社のカスタマージャーニーマップの事例も参考にしながら、自社が現在提供していないものの、顧客が検討段階で利用しているタッチポイントもリストアップしておくと、今後の対策を検討する際に役立ちます。
これまでに明確にした顧客の行動、感情、タッチポイント全体を把握し、課題を解決するための対策を検討します。課題を見つける方法は大きく2つあります。1つは、顧客の感情がネガティブになっている箇所に注目する方法です。例えば、担当者が社内での承認プロセスを負担に感じている場合、承認に必要な書類作成に役立つ導入効果の算出方法や、類似業界での成功事例といったコンテンツを充実させることが対策として考えられます。もう1つは、マップの縦と横のつながりに着目する方法です。マップを縦に見たときに、行動、感情、タッチポイントが一致していなかったり、マップを横に見たときに顧客の行動がスムーズに繋がらず、空白の時間がある場合は、見落としている要素が存在する可能性があります。そこを深掘りすることで、新たな対策のアイデアが生まれやすくなります。対策のアイデアを出す際には、必ず具体的な行動まで落とし込むことが重要です。「受注率が低いので改善しなければならない」だけでなく、「〇〇を実施すれば改善される可能性がある」というレベルまで具体的に検討しましょう。また、ある程度のアイデアが出揃ったら、視点を変えてみるのも有効です。「もし1億円の追加予算があれば何をするか?」「顧客からの受注単価を10倍にするにはどうすれば良いか?」など、普段意識している制約を取り払って考えることで、より自由な発想が生まれることがあります。
実行可能な対策のアイデアが揃ったら、それぞれの優先順位を決定します。顧客体験に最も大きな影響を与えると思われる課題に対して、施策の効果や必要なコストなどを考慮し、最初に取り組むべき施策を選定します。すぐに実行できるほど具体的な施策に落とし込めなかった場合でも、出てきたアイデアについて「チームで継続的に検討する」「顧客にヒアリングを実施する」など、次のアクションを明確にしておきましょう。また、施策を実行した後は、必ずその結果を分析し、得られた示唆をカスタマージャーニーマップに反映することが重要です。作成したマップは常に参照できる場所に保管し、マップ上の仮説と実際の顧客からの反応に相違がないかを常に意識するようにしましょう。
BtoBのカスタマージャーニーマップを作成する際には、以下の点に注意が必要です。
カスタマージャーニーマップをビジネス成果に結び付けるためには、以下の重要なポイントを意識しましょう。
オンラインで共同編集が可能な作図ツールを効果的に活用することで、効率的かつスムーズにカスタマージャーニーマップを作成できます。
他社の成功事例を参考にすることで、自社のカスタマージャーニーマップ作成における新たな発想や改善点を見つけることができます。
全ての見込み顧客に対して同じように対応することは非効率であるため、カスタマージャーニーマップ上の各フェーズに応じて、優先順位と最適な対応方法を明確にすることが重要です。そこで、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという3つのアプローチが有効となります。
これらのアプローチを参考に、各フェーズにいる顧客にとって最も効果的な対応方法を検討し、顧客体験の向上を目指しましょう。
カスタマージャーニーマップは、BtoCのみならずBtoBにおいても効果的なツールです。作成を通じて社内全体の顧客理解が深まることは、長期的に見ても非常に大きなメリットとなります。ぜひ、この記事を参考にカスタマージャーニーマップの作成に着手し、顧客視点に基づいた営業・マーケティング活動を展開してください。ジャーニーマップを活用することで、各フェーズでの顧客接点の価値や課題発見に役立つ情報を得ることができます。
回答:まず、カスタマージャーニーマップを作成する目的と目標を明確にし、企業のペルソナと、担当者のペルソナを設定します。次に、購買に至るまでの行動を洗い出し、顧客の感情を想像しながら、顧客との接点を詳細に検討します。最後に、特定された課題に対する解決策を考案し、実行に移します。
回答:企業の抱える課題を正確に捉え、比較検討が行われることを前提として取り組み、企業全体が協力して作成することが重要です。さらに、各フェーズにおける優先順位や対応策を明確にし、定期的な見直しと改善を行う必要があります。
回答:効果的なカスタマージャーニーマップ作成には、Lucidchart、Miro、diagrams.netといったオンラインの作図ツールが役立ちます。これらのツールは、豊富なテンプレートと共同編集機能を備えているため、チームでの協働作業に最適です。