HubSpotで実現する高度な条件付きデータ取得:関連オブジェクトからの効率的な情報活用法

Mia Bytefield
July 1, 2024

動画解説

今回のテーマ

HubSpotのCRM機能を使いこなすユーザーにとって、関連オブジェクト間でのデータ連携は重要な課題です。特に、複数の取引から最新の情報だけを抽出し、コンタクトに反映させるような高度な操作は、ビジネスの効率化に大きく貢献します。本記事では、HubSpotの標準機能では難しかったこのような高度なデータ取得を可能にする、新しいワークフローの設定方法を詳細に解説します。

従来の制限と新ワークフローの必要性

HubSpotには標準でプロパティのコピー機能が提供されていますが、これには限界があります。例えば、コンタクトから取引のプロパティをコピーする際、全ての取引からしか選択できず、細かい条件設定ができませんでした。

具体的なケースを考えてみましょう。あるコンタクトに3つの取引が紐づいており、全ての商談がクローズしているとします。この中から、最もクローズ日が新しい取引の商談種別や金額をコンタクトにコピーしたい場合、事前にワークフローを設定していれば可能なのですが、過去に振り返って特定オブジェクトのプロパティからコピーを行うことは困難でした。

このような制限を克服するため、弊社のカスタムワークフローで機能を開発しました・

新ワークフローの概要と設定手順

新しく開発されたワークフローは、HubSpotのUI制限の中で最大限の機能を提供することを目指しています。結果として、やや複雑なUIとなっていますが、非常に細かい条件設定が可能になりました。

以下に、このワークフローの設定手順を詳細に解説します:

1. スターターアクションの選択:まず、「関連オブジェクトからデータを取得」というスターターアクションを選択します。このアクションはデータ設定プロパティを取得するため、処理量が多くなりエラーで停止することがあります。エラーが発生した場合は、ワークフロー自体を更新することで復旧できます。設定中は都度保存することをお勧めします。

2.関連先オブジェクトの選択:今回のケースでは、関連先として「取引」を選択します。

3.条件プロパティの設定:次に、どのような条件の取引を取得するかを設定します。例えば、取引の「商談種別」や「サービス」、「商品」といった属性に基づいて、特定の値を持つものだけを取得するよう指定できます。

4.オブジェクト固有のプロパティ選択:関連オブジェクトが会社、コンタクト、取引の場合で、それぞれ選択肢が並んでいます。今回は取引を選択します。UIの制約上、他のプロパティも表示されますが、選択したオブジェクトに関連するものを使用します。

5.詳細条件の設定:例えば、取引の場合は「deal type」を選択します。ここでは、半角カンマを入力することで複数の条件設定が可能です。データの更新には時間がかかる場合があります。

この設定を行うことで、取得するオブジェクトとして

コンタクトに関連している取引の中から、deal typeで「新規」と「既存」の値があるものというフィルター条件を設定できます。

6.並び替えルールの設定:新しい順か古い順かを選択できます。今回のケースでは新しい順を選びます。

7.並び替えの基準日設定:クローズ日やクローズ予定日など、任意の日付を基準として選択できます。

前の設定で、複数のオブジェクトが選定されている場合、どのレコードのプロパティの値を引っ張ってくるかを設定する必要があります。

このワークフローでは日付を基準として並び替えを行うことで、どのレコードのプロパティを引っ張ってくるかを設定する形となります。

8.取得プロパティの選択:最後に、実際に取得するプロパティを選択します。取引の場合、金額やアカウントなどを選ぶことができます。

これらの手順を踏むことで、例えばディールタイプが新規のAとCの取引があり、そのうちクローズ日が最新のものの商談金額のみを取得するといった、非常に細かい条件設定が可能になります。

UIの制限と将来の改善可能性

このワークフローは非常に強力ですが、HubSpotのUI制限により、いくつかの使いづらい点があります:

  1. データ更新の頻度:入力するたびにHubSpotの仕様でフェッチが実行されるため、毎回更新が発生します。
  2. 複雑なUI:必要な情報を取得できますが、UIが複雑になっているため、直感的な操作が難しい場合があります。

これらの問題点は認識されており、将来的にカスタムワークフローのUIがアップデートされた際に、よりわかりやすい表示に変更される予定です。

API使用と実行時の注意点

このワークフローは、他のワークフローよりもHubSpotのAPIを多く使用します。具体的には、以下のような処理でAPIを使用します:

  • 紐づいているコンタクトからのデータ取得
  • 新しいデータの判断
  • 条件に基づくデータ取得
  • コンタクトの値の変更

1回の実行で3〜4回のAPI呼び出しが発生するため、大量に実行する場合には注意が必要です。

実行時の注意点:

  1. 実行の分散:コンタクトの登録が短時間に集中する場合は、ランダムパーセンテージで分割して登録を分散させることをお勧めします。
  2. 実行リストの絞り込み:APIのコール制限にかからないよう、実行するリストを何らかの条件で絞る必要があります。全てを一度に処理しようとすると、更新しきれないものが出てくる可能性があります。
  3. 再実行の必要性:リストを分散させても一部だけが処理され、残りが処理されないケースがあります。その場合は、トリガーを再設定して再実行する必要があります。
  4. 遅延の導入:処理に遅延を入れることで、より安定した実行が可能になります。
  5. リストサイズの最適化:2,000〜3,000件程度のリストサイズであれば、ほぼ問題なく実行できますが、それでも一部処理されない場合があるため、複数回に分けて実行することをお勧めします。

これらの注意点を守ることで、APIの使用制限を回避しつつ、効率的にワークフローを実行することができます。

まとめ

HubSpotの標準機能では難しかった、関連オブジェクトからの条件付きデータ取得を可能にする新しいワークフローを紹介しました。このワークフローを使用することで、複数の取引から最新のデータのみを抽出し、コンタクト情報に反映させるなど、高度なデータ管理が可能になります。

設定には多少の複雑さがありますが、一度設定すれば非常に強力なツールとなります。API使用量が多いため、実行時には注意が必要ですが、適切に管理すれば大きな問題なく利用できます。

このワークフローはスタータープランでも利用可能なため、多くのユーザーが活用できます。HubSpotのデータ管理をさらに効率化したい方は、ぜひこの新しいワークフローを試してみてください。将来的なUI改善も期待できるため、今後さらに使いやすくなる可能性も高いでしょう。

HubSpotを活用したデータ管理の最適化は、ビジネスの効率化と顧客理解の深化につながります。本記事で紹介したテクニックを活用し、よりスマートなCRM運用を実現してください。

Mia Bytefield
July 1, 2024