組織 は 戦略 に従うは本当か?戦略を実行できる組織とできない組織:スモールビジネスの視点から

Mia Bytefield
August 26, 2024

動画解説

戦略実行の障害

日常業務の優先

スモールビジネスの立ち上げ期には、売上確保のための日常業務に追われがちです。これにより、新しい戦略や方向性を考え、実行するためのリソースが不足してしまいます。「緊急ではないが重要なこと」に取り組む時間を確保することが、戦略実行の第一歩となります。

不適切な目標設定

目標設定に関しては、以下の点に注意が必要です:

  1. 目標の数:人間が管理できる目標の数は限られています。3つや4つも目標があると、達成率が非常に低くなってしまいます。理想的には1〜2個、最大でも3個程度に絞り込むべきです。
  2. 目標の曖昧さ:客観的に測定可能な数値目標でなければ、具体的な行動に結びつきにくくなります。計測可能性は目標設定において非常に重要です。
  3. 長期的戦略との関連性:長期的な戦略と関連性のない目標は、チームのモチベーションを低下させてしまいます。特にベンチャー企業では、従業員が様々な野望を持って参加していることが多いため、単にキャッシュを稼ぐだけの目標ではモチベーションが欠如してしまう可能性があります。

リーダーのコミットメント不足

組織の規模によって求められるリーダーシップの対象は異なります。大企業では各チームのリーダーやマネージャーにリーダーシップが求められますが、100人以下のスモールビジネスや150〜200名クラスの企業では、社長自身がリーダーシップを発揮する必要があります。

小規模な企業では、経営者が自ら行動できる状態でいることが重要です。メンバーに任せることも大切ですが、その任せ方には注意が必要です。リーダーシップやアカウンタビリティの渡し方を誤ると問題が生じます。

経営者の役割は、アカウンタビリティに対して目標や方向性を明確にし、メンバーが働きやすい環境を整えることです。働きやすくする努力をせず、無法地帯のまま渡すのはコミットメントとは言えません。リーダーがコミットメントしない組織では、従業員もコミットしません。

アカウンタビリティの欠如

アカウンタビリティは単に目標数字に対して責任を持つよう言うだけではありません。組織が動きやすいように仕組みを整えた上で、アカウンタビリティを発揮させることが重要です。この仕組み作りをせずしてアカウンタビリティを求める経営者は失格と言えるでしょう。

戦略実行を促進する4つの規律

1. 目標の絞り込み

リーダーは多くの目標を持ちすぎているケースが多いため、最重要な目標に絞り込んでフォーカスすることが重要です。スモールビジネスで100人から300人程度の組織では、社長が1つか2つの目標に絞り込み、最も重要な部分に集中することが成長につながります。

目標を定めるためには、事業計画を定期的に見直して作り直すことが必要です。四半期や半期ごとに事業計画を見直し、月次で目標数値の達成状況を確認しつつ、年間目標に対する進捗も見ていくことが効果的です。

計画は最初は複雑になりがちですが、慣れてくるとシンプルになっていきます。シンプルな事業計画を何度も作り直すことで、成長すべきポイントが明確になります。

経営者であれば、トップの目標に対して絞り込むことはそれほど難しくありません。しかし、メンバーにどのように目標を落とし込むかは難しいポイントです。これは渡す側の難しさだけでなく、受け取る側が上位の目標と関連づけながら目標を定めることの難しさもあります。

主要な目的を明確に理解していなければ、単純な数値計画しか作れなくなってしまう危険性があります。トップの考えるオブジェクティブに対して自分たちのオブジェクティブがどこに関連しているかを見定め、そこに対してどうOKRを定めるのか、各メンバーに落とし込むのかという点が非常に重要です。

2. 先行指標の設定

先行指標は、長期目標につながる日々追いかけられる小さな目標です。どんなに大きな目標でも細かく切れば小さな目標になります。ブライアン・トレイシーが言うように、「大きな象を食べるには細かく切らないと食べられない」のです。

先行指標は日々計測できる小さな目標にしなければなりません。たとえば、売上を直接追いかけるのが難しい業態では、リード数や商談数など売上に至るまでの手前の指標を細かく設定します。

ここから自分が最初に行動できることは何かを考え、日々追いかけられるものを淡々とこなしながら、長期目標との関連性を意識することが重要です。たとえば「このターゲットに対してこういう提案をしてください」という形で具体的な指示を出し、実際に商談をこなしながら、どういう訴求が最も効果的かをブラッシュアップしていきます。

組織を動かす際は大きな目標を噛み砕いて、売上に対する先行指標をどう追いかけていくかをメンバーに渡し、どう実行するかという手順まで明かすことが重要です。たとえば「ベーカリーで客全員に試供品を渡す」という活動は売上向上のための先行指標になります。

3. スコアボードの活用

スコアボードは、よくある営業組織のホワイトボードのようなものですが、ここでは「チーム一丸」という、少し違った観点から考えます。事業組織では、セールスだけでなくマーケティングやカスタマーサクセスなど様々な役割があります。これらの組織が一枚岩となってスコアボードに対して意識を持つことが重要ですが、これはなかなか実現が難しいものです。

目標数値をかなり意識させないと、チーム一丸となることは難しいでしょう。たとえばマーケティングとセールスでは、一見同じような目標に見えて実は異なります。セールスは売上を、マーケティングはリード数を目標にすることが多いですし、カスタマーサクセスも異なる指標を持っています。

これらの異なる目標をどうスコアボードに統合するかが課題です。チームの努力を可視化し、それぞれのチームの目標を1つのものとして見せられるかどうかが、事業部長やマネージャーの重要な仕事になります。

スモールビジネスにおいては、経営者自身がスコアボードを毎日確認することが重要です。単に会計や財務を見るだけでなく、先行指標としてスコアボードを毎日チェックすることで、事業の進捗を把握できます。経営者がこれを意識できるかどうかで、新しい戦略や事業を立ち上げられる人か否かがわかるでしょう。

4. アカウンタビリティの確立

アカウンタビリティについては先述の通りですが、単に責任を渡すだけでなく、組織の仕組みをしっかり整えた上で責任を委譲することが重要です。新任のマネージャーは意気込んで色々とやりすぎる傾向がありますが、戦略が実行できていないと客観的に判断した場合は、見直すことが大切です。

スモールビジネスにおける戦略実行のポイント

経営者自身のリーダーシップの重要性

スモールビジネスでは、経営者自身が率先して戦略実行に取り組む必要があります。経営者が明確なビジョンを持ち、それを従業員に伝え、実行のための環境を整えることが重要です。

リソースの制約への対処

スモールビジネスの最大の課題は、リソース(資金、人材、時間)の不足です。限られたリソースを最大限に活用するためには、以下の点に注意が必要です:

  1. 優先順位の明確化:最も重要な目標に集中し、それ以外は思い切って後回しにする勇気を持つ。
  2. 効率的な業務プロセスの構築:限られた人員で最大の効果を出すための仕組みづくり。
  3. アウトソーシングの活用:コア業務に集中するため、周辺業務は外部リソースを活用する。

定期的な事業計画の見直しと修正

環境の変化が激しい今日、長期的な計画を立てても、その通りに進むことはまれです。そのため、定期的に事業計画を見直し、必要に応じて修正することが重要です。具体的には以下のようなサイクルを回すことをお勧めします:

  1. 四半期または半期ごとの事業計画の見直し
  2. 月次での目標達成状況の確認
  3. 年間目標に対する進捗の確認
  4. 必要に応じた計画の修正

このサイクルを回すことで、環境の変化に柔軟に対応しながら、戦略の実行を確実に進めることができます。

まとめ

戦略の実行は、特にスモールビジネスにとって大きな課題ですが、本記事で紹介した4つの規律を意識しながら組織運営を行うことで、その実現可能性を高めることができます。

  1. 目標の絞り込み:最重要な1〜2個の目標に集中する
  2. 先行指標の設定:大きな目標を日々追跡可能な小さな目標に分解する
  3. スコアボードの活用:チーム全体の進捗を可視化し、一丸となって目標に向かう
  4. アカウンタビリティの確立:責任を委譲する際は、適切な環境と仕組みを整える

これらの規律を守りながら、経営者自身がリーダーシップを発揮し、定期的に計画を見直すことで、リソースの制約がある中でも効果的に戦略を実行することができるでしょう。

戦略の実行は一朝一夕にはいきませんが、継続的な努力と改善を重ねることで、必ず成果につながります。スモールビジネスの経営者の皆さんは、ぜひこれらのポイントを意識しながら、自社の成長戦略の実現に取り組んでみてください。

Mia Bytefield
August 26, 2024